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MMCC

 陽の光と小鳥のさえずりで目を覚ます。何時に起きたのかはわからない。時計を持っていないからだ。夜のひとときだけ使える電気で充電しておいたパソコンを使ってレポートを書いた。ここの生活で、夜はとても重要だ。よくある話で、昼間は暑くてとてもじゃないが出歩きたくはない。昨日もワイスの家から帰る途中、大勢の人が井戸の水をくんでは運んでいた。確かにこんな作業を昼間やるのは大変だ。
 朝、なんとなくMMCCを見て回る。子どもたちは思い思いのプログラムに参加していた。驚いたのは、テコンドーのクラスがあるのだ。15人近くの子どもたちが、きちんと白い胴衣を着てかけ声とともに回し蹴り。写真をとるのも忘れて見入ってしまった。私が写真をとっているのは知っているので、みんな思い思いの得意技を披露してくれる。それぞれよく練習しているようで、とても上手だ。MMCCでは、子どもたちが自ら舞台で得意技を披露し、演劇プロジェクトによって「マラリアの対処法」「手を洗うことの大切さ」を伝えている。現在では、アフガン保健省からかなりの金額を引き出し、地方公演を行っている。手を洗いさえすれば、死なずにすんだ子どもたちがたくさんいたはずだ。演じる側の子どもたちにとっても、ある種のリハビリ効果もあるのだという。子どもたちが持っている傷は、簡単には癒えない。

今日はASCHIANAに行ってみよう。車に乗って出かけるわけだが、以前には考えられないような大渋滞。20〜30分くらいかかってASCHIANAに到着。なんとも懐かしい雰囲気だ。ゲートをくぐると警備の人がいる。以前と違っていたのは、なにやら入館証が必要らしい。名前や団体名、目的を書くようにいわれる。以前はこんなの無かったなと言うと、最近は治安が悪い。とのこと。入館証をもらい中に入る。ちなみに私はアフガンの普通の人たちが着ているモノと全く同じ服を着ている。ある意味、逆に怪しい人かもしれない。とりあえずまずは挨拶をしようと、ディレクターのオフィスへ。階段を上りきったところで正面にオフィスの中が見える。当然向こうからも見えるわけだが、ひとりの男が目を細めている。彼はそのままゆっくり立ち上がり、驚いた顔をしている。うひょ〜。なつかし〜。わはは〜。などと言いながら握手握手。顔をくっつけるこっち特有の挨拶も。正直ひげがきもい。

残念ながら、ユセフ氏は今日は外回りをしていていなかった。全く気にすることはない、また明日来ればいいのだ。オフィスで写真をとることを伝え、後日改めて挨拶に来るよと。まずは、基礎学習クラス。驚いたことに、このセンターだけでも教室が2倍ほどに増えている。子どもたちも増えた。しかし、2年たっても、読み書きのクラスには子どもがあふれている。当然顔ぶれは変わっていて、知っている子どもはひとりもいなかった。だが、彼らの真剣さはなにも変わっていない。私が寝泊まりしているMMCCの事務所の近くにもASCHIANAのセンターがある。センターナンバーは5と書いてあった。カブール市内にずいぶんたくさんあるようだ。
同じく基礎学習クラス。この教室にはいると、先生と目があった。おぉ〜!!!オーストラリア人の先生。すぐに気づいたみたいだ。彼は絵画のクラスもみているので、ずいぶんいろいろ話をしたものだ。ここのクラスは基礎中の基礎、数字の読み書きをやっていた。すると、なにやらうわさを聞きつけて絵画のクラスの連中がやってきてしまった。こいつらは悪ガキ集団。彼らが入ってきてしまっては授業にならない。とりあえず絵画のクラスにワイワイと移動して、ど突き合いをはじめる。ナジブラ、ショルディーン、ザマン・・・。2年前はスキンヘッドだったザマンは、いまやふさふさ。ホントに地毛か?おい。
いろいろ話を聞いてみると、この2年間にもいろいろあったようだ。私が何人かの名前を出すと、あいつはどうしてる、こうしてると教えてくれたりもするが、ある名前については、だれも何も言わず、口を閉ざしてしまう。どうした?と聞くと、話をそらす。いったい、どうしたんだろう。気になるのは、彼だ。2年前、よく私に絡んできた少年。兄さんが帰ってくるのを待っている。その彼は、どうしているのだろう。あまり考え込まず、明日聞いてみよう。
 となりの裁縫のクラス。ここは女の子たちのクラスなので、写真は撮れるが、話ができない。きちんとした通訳さんがいないと。。。彼女らは基本的に職業訓練をする以外は、家事手伝いをする。路上で働いている女の子はそれほど多くない。家事手伝いは、こちらではきちんと認められた職業だと思っていい。教室のあちこちには、文字が読めない子どもたちにもわかるように、絵で描かれた啓蒙ポスターが貼ってある。町のあちらこちらにも貼ってある。
これは、チャイ。私の大好物。2年前と変わらない味だった。下の方の白く見えるのは、全部粗目の砂糖。熱いチャイを注ぐと雪のように舞って、程良く溶けるのだ。うん。正直な話、かなり溶ける。だけど貴重なカロリーだ。ホントにおいしい。沈んでいる黒いものは、おちゃっぱです。

 事務所に戻った。まだ午前11時。ずいぶん長い午前だったな。事務所に戻るとDavidがいた。2年ぶりだ。彼は休暇を返上して戻ってきてくれた。ありがたい。昔話に花が咲いた。2年前、監獄のようなムスタファホテルの小部屋でお互いの夢を語り合った。その部屋の壁に飾ってあった衣装や小道具は、今も大切に事務所にあるという。「大きなトレーラーにアフガン人の役者を乗せて、地方をまわるんだ。字の読めない子どもたちの教育のために。」今、彼らのモバイルミニサーカスは、アフガン北部の村々をまわっている。今やっているのは、「ハンドウォッシングプログラム」「マラリアプログラム」。アフガンでは、手を洗わなかったために病気になってしまう子どもが後を絶たない。たくさんの子どもたちが命を落としている。大きな汚い手と、きれいな手が登場する彼らの演劇は、とても評判がいい。私は2年前、彼のプロジェクトを応援することを約束した。そして、当時私が持ってきていたデジタルカメラ、デジタルビデオカメラを彼にドネイトすることにしたのだ。そのカメラは2万枚近くの写真を撮り、ついこの間、壊れてしまったという。途中、バッテリーが完全に消耗してしまってまったく使えなくなったりもした、スペアのバッテリーを届けるのにずいぶん苦労した覚えがある。この砂埃のひどい国で2年間働き続けたカメラ、勝手な思いこみだが、満足だったのではないだろうか。彼は、「このカメラのおかげで、今のMMCCがある。」とまで言ってくれた。それまでどれだけ言葉で説明しても難しかったのに、たった一枚の写真を見せただけで、多額の資金を援助してくれた人もいたそうだ。それを聞いて、なんだか私もうれしくなってしまった。こちらこそ、ありがとう。私が託したものを、本当に役に立ててくれて、本当に成果を上げている。私にできることは、これくらいのことでしかないかもしれない。すごく単純なことだ。私にとって、彼は友人であり、親友でもある。そして、私は彼の夢に共感している。それ以外に、何もいらない。十分な理由だ。

 MMCCは、現在新しい事務所を作るための準備をしている。今の事務所は、たくさんの活動室と、大きなグラウンドがあるが、月々の家賃が1200$もかかっている。しかし、気候の良い冬の時期には、毎日500人もの子どもたちがやってきて、歌を歌ったり、演劇ワークショップをしたりしているらしい。そのためにも、この事務所はとても必要なのだ。しかし、お金が出ていくものは、少しずつ変えていきたい。彼らは政府と交渉して、どこかに土地をもらおうとしている。そして、そこに子どもたちのための城(?)を自分たちで建設するという。夢のような話だが、彼ならやってしまいそうな気がする。もちろん、私もできることをしよう。同じ思いの人間が、きっと彼の周りにはたくさんいるだろうから。

 ずいぶんたくさん話をした。もちろん、私自身のこともたくさん話した。彼は自分たちの活動をどうやって世界にアピールしていくかを常に考えている。そのためにデジタル映像編集の技術や、機材の使い方を知らなければならない。私の知識は、かなりアマチュアだが、ここにある機材でやらなければいけない場合、意外と役に立つことに気がついた。とまぁ、そんなことをレクチャーしたり、一緒にお茶を飲んだり、味のない食事をしたりした。夜は一緒にインターネットカフェへ。恐ろしいほど通信速度のないカフェだが、この際あるだけありがたい。日本では数分で終わる作業を1時間以上かけてなんとかこなす。とっぷりと暗くなり、外を出歩くのは危険な時間になってきた。カブールには、2年前に比べてたくさんのレストランができている。2年前は、中華もどきレストランと、マルコポーロというイタリア料理屋のみ。中華もどきレストランは、空港から来る途中に通ったが無くなっていた。移転したのかつぶれたのか、どちらにしても行こうとは思わないのでどうでもいい。「ピザを注文しよう」と。なんと、宅配ピザがあるのだ。これは驚いた。まだ「住所」というものが存在しないこの町で、どうやって宅配するのだ!?と思っていたら、案の定、常連客のみで、知っている場所だけのようだ。しかし、夜まで仕事をしている人やNGOの事務所からかなりのニーズがあるらしく、ずいぶん儲かっているようだ。とりあえず、届いたものは、「ピザもどき」だった。


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